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河端 梢|pianist
Kozue Kawabata
Program Notes
モーツァルト:
ピアノソナタ 第13番 変ロ長調 KV333
I. Allegro
II. Andante cantabile
III. Allegretto grazioso
このソナタは1783年、ザルツブルクに帰郷していたモーツァルトがウィーンへ戻る旅先のリンツで作曲し始め、ウィーンで完成されたと考えられている。モーツァルトのピアノソナタの中でも極めて円熟した作品であろう。第1楽章は流れるような下降形の美しい旋律にアポジャトゥーラを組み込んだテーマが印象的だ。展開部では数小節間のアルベルティバス(伴奏として演奏される分散和音)を伴って起こる調性の変化が心を揺さぶり緊張感を高める。短調の悪魔的な要素を残したバスの変ト音、短調と長調を交えた即興的な旋律の駆け引きによって導かれる再現部では美しいテーマがより際立たせられている。アンダンテカンタービレ(歌うように)と指示された第2楽章はオペラのアリアを思わせ、デュエットと弦楽アンサンブルのような響きが柔らかく深みのあるハーモニーを作り出す。第3楽章はロンド形式で書かれており、モーツァルトらしい遊び心に溢れたチャーミングで軽やかな印象を与える。ピアノソナタには珍しく長大なカデンツァが用意されており、その導入部はオーケストラのトゥッティさながらの響きであり、この作品がピアノ協奏曲をイメージして作曲されたであろうことを確信させる。
2018年3月 河端梢ピアノリサイタル
©︎2018 Kozue Kawabata
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